聖霊降臨後第4主日

マタイは福音書を著し、当時の社会の反対や、ユダヤ教の反発を受けながら生きていたキリスト者共同体に、イエスのことばを思い起こさせ、福音宣教の使命について励ましのことばを送っている。限られたグループとして地上のイエスを囲んだ弟子たちの「隠れたところ」から、恐れずに、公に宣教する時代になったと訴えている。
今日の福音では 「恐れるな」 が三度も繰り返される。「心を騒がせるな!」これは、母親が愛する我が子へ、教師が信頼する生徒に掛けることばである。そして、多くの場合は、 実際に、その相手に「心を騒がせる理由があり、不安や恐怖の中にいる」から言われることばである。
私は、 最後の晩餐でのイエスの “別れの言葉” を思い起こす。「心を騒がせるな。おびえるな。『わたしは去って行くが、また、あなたがたのところへ戻って来る』と言ったのをあなたがたは聞いた(ヨハネ14:27-28)。」
イエスの弟子である私たちは、どこから福音宣教の勇気や力を得られるだろうか?今日の福音書が明確な答えを与えてくれる。 神ご自身がご自分の民の力になるから、恐れることはない。まず、これから起こるであろうと予想される迫害を恐れるな。神は福音のメッセージを保証してくださるので、すべての人に宣べ伝える福音に対する暴力や迫害を恐れることはない。今も未来も、イエスの愛の心を伝える者として迫害されることを恐れるな。体と魂は人間の別々の部分ではなく、“魂”は人格の命の原理として考えられていた。神のもっとも小さいものに対する摂理や思いやりを思い起こすならば、 イエスの弟子が恐れることは何もない。主イエスが私たちに、恐れに直面したとき、どのように乗り越えるかを教えてくれる。 イエスにとって、恐れることの逆は勇気ではなく、神に信頼することである。
「二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか。だが、その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない。あなたがたの髪の毛までも一本残らず数えられている。だから、恐れるな。 あなたがたは、たくさんの雀よりもはるかにまさっている。」

マタイによる福音書10章16-33節

2023年6月25日