聖霊降臨後第9主日
「天の国」
これをお読みの皆さんはきっと、「天の国」とは何?「天の国」はどこに? そして、「天の国」にどのようにすれば行けるの?とお考えになられるのではないでしょうか。天の国とは、いったい何なのでしょう。
ヘブライ語で天とはシャマイムといいます。水のことをマイムというので、どうやら天と水は関係しているようです。聖書の世界の先人は雨のことを天の穴から水が落ちてくると考えていたようです。大地は水、マイムを湛えた海、ヤミームによって分けられ、その地下深くには黄泉の国、シェオルがある。死者の行くシェオルは暗闇の無の世界で、我々人間の生と死は、天、シャマイムを支配する神に全面的に委ねるしかない…… 海、ヤミームに分断され、いつ災害に見舞われるかも知れぬ脆弱な大地にかろうじて生きている人間の、なにか、儚さ、弱さ、小ささを感じさせる世界観がそこにあります。
さて、今日のイエスは、この地上に生きる我々に向け、天、シャマイムが今、ここにあるのだよと教えてくれます。高い、高い、突き抜ける空のむこうの天。神さまの支配の座は、我々の手の届かない遥か彼方ではなく、ここにある。「畑」にあるのです。
この「畑」という言葉も意味深いものです。土によって特性づけられるこの「場」は、おそらくあらゆるものを示しています。わたしの身体、わたしたちの共同体、わたしの仕事場、わたしたちの作業場、生きている現場、会社、社会、自治体、国家、世界、手の働きが及ぶところ、そう、あなたの、わたしの「この手」で耕せるフィールドです。
イエスは、かつて権力者たちが「高い、高い、お前たちの計り知れぬほど高いところの神は……」と上から教えていた過去に対して、根本的な問いを投げかけ、ひっくり返します。天の国、神さまの支配は、いま、ここ、なのだよと教えてくれます。
マタイによる福音書13章31-33、44-49節a
2023年7月30日