聖霊降臨後第14主日

ディズニー映画の『プーと大人になった僕』の中に「『何もしない』は、最高の何かにつながる」という言葉を大人になったクリストファー・ロビンにプーが言う場面があります。実は、この言葉は、かつてロビンが子どもだった頃、プーに伝えた言葉でした。プーは、ずっとその言葉を守りながら生きてきました。
しかし、大人になったロビンは仕事に追われ、週末に予定していた家族との大切な時間さえも犠牲にして書類を作成します。そんなとき、プーが現れ、ロビンに「僕は、『何もしない』を毎日続けているよ」というのです。
今日の福音の中に「わたしについて来たい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい」という言葉をイエスが弟子たちに伝えます。この中の【自分を捨て】という言葉は、プーが言った【何もしない】ということではないでしょうか。
私たちは、ついつい「自分がなんとかしないと」と何でも自分中心に物事を進めてしまう傾きがあります。仕事や家事や子育てや、教会での活動で「私が何とかしないと」「私が頑張らないと」など気を張ってしまいます。しかし、そのような気持ちで続けていては、どうしても頑張りすぎて、かえって疲れてしまうことがあります。
「自分を捨てる」というのは、「私が何とかしないと」という気持ちを一旦横において、イエスに委ねるということではないでしょうか。たとえば、隣の人に任せてみる、「誰か助けて」とお願いしてみるとき、きっと、「私が思ってもみなかった奇跡」が起こるかもしれません。それは、イエスが【私】に代わってしてくださっているからです。
イエスは、ペトロに「あなたはわたしの邪魔をする者」と言われます。この【邪魔】という言葉は、イエスの行く手を阻むということのようです。ペトロは、知らない間にイエスの前に立っていたのでした。私たちは、イエスに従う者であって、イエスの前に進んではいけないのです。今一度、私たちの生活を振り返り、イエスにお委ねして「何もしない」という生活を始めてみてはいかがでしょうか。

マタイによる福音書16章21-27節

2023年9月3日