聖霊降臨後第25主日

心から信頼することの重要さ。そのことが、今日の三つの朗読箇所から伝わってきます。キリストは、弟子たちに信仰者の生き方を伝えています。神が相手の能力を適切に認めて、活躍の場を与えます。そして、人間は神からの期待に応えようとして、能力に見合った成果を挙げます。相手を認める神、神に全力で応える人間。彼らは信頼関係を深めつづけます。
しかし、一タラントンを神からいただいた人は神への信頼をじゅうぶんに持てないままでした。神をおそれるあまり、自分の能力を活かすことを諦めてしまったからです。おそれは私たちを委縮させて何もできなくさせます。おそれは私たちの心をストレスで満たすことで、明るい歩みを果てしなく後退させます。

私たちはお互いに相手の能力を気にして比較し、競争する社会システムにおいて生きています。つまり、神を意識せずに、人間的な能力が多いか少ないかを比べて嫉妬心にさいなまれるわけです。神からの期待を忘れて、自己保身に走る人間のおろかさは各自をちぢこまらせ、のびやかな安心感を失わせます。競争と猜疑心が、各自の心をストレスで荒れ果てさせます。

使徒書の一テサロニケの教会への手紙では、キリストの弟子として共同体のなかで生きている信徒たちが、光の子としての現実に感謝すべきことを丁寧に述べています。自分の姿を忘れ、世間の情報操作に右往左往するような浅はかさを脱して、ひたすら神への信頼の気持ちを輝かせて前進することこそが、肝要なのです。

本日の朗読箇所に共通しているのは、神に対する必要以上のおそれをいだいて信頼関係をこわさないように、私たちの心の持ちようを示すことです。神との信頼関係を意識している信仰者は、この世での生活を決しておそれずに、のびやかに生きることができるものなのでしょう。

マタイによる福音書25章14ー15、19ー29節

2023年11月19日

主日の福音から

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