復活節第2主日
「あなたがたに平和があるように」というイエス・キリストによる呼びかけ。この「平和」とは新約聖書のギリシア語では「エイレネー」であり、いわゆる「心のおだやかさ」・「平安」・「安心感」・「存在することを徹底的にゆるされている肯定感」などを意味する呼びかけです。こうして、イエス・キリストは相手に対して徹底的に安心するように呼びかけていることがわかります。
弟子たちは大切な恩師であるイエス・キリストを見棄てて逃げました。そのため、イエス・キリストに対して顔向けできるような状態ではありませんでした。つまり、イエスを裏切っていた弟子たちは追いつめられていました。
「あなたがたに平和があるように」というイエス・キリストからの呼びかけは弟子たちの望みを全面的にかなえるものであり、まさにタイムリーな助け舟となるものでした。しかし、トマスはイエス・キリストの呼びかけの場面に同席していませんでした。ですから、トマスは、おそらくは他の弟子たちの安堵感を横目で見ながら、嫉妬心を身におぼえていたのかもしれません。それで、あえてへそ曲がりな強がりを言ってみせたわけです。他の者たちだけにイエス・キリストが姿を見せて、自分には姿を見せてくれないことへのくやしさとあせりが、トマスの心を傷つけていたのかもしれません。
イエス・キリストは相手に応じた態度を見事に見せます。結果的にイエス・キリストはトマスに対しても、丁寧に対応して魅了します。このイエス・キリストの全力投球の対応能力は、相手を愛する熱意の激しさによるものです。その熱量を想い起こしつつ、今日も主日の聖餐式のなかで行われる「平和のあいさつ」を私たちも心をこめて実行に移してみましょう。相手に安心感を与える心づもりで丁寧にあいさつしてみることで、きっとイエス・キリストの復活の力強さを実感できるようになるでしょう。こうして日常の簡単なあいさつにも、いのちがけの愛のエネルギーをこめて相手に向き合うことで、私たちもまた神のいつくしみを社会的にも実現することになるのです。
ヨハネによる福音書20章19-31節
2023年4月16日