「飼い葉桶のキリスト」

「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまつて飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」
(ルカによる福音書第2章11~12節)。

今年の西宮聖ペテロ教会のクリスマスは、「飼い葉桶のキリスト」というテーマで過ごします。ルカによる福音書のクリスマスのメッセージは、何と優しさといたわりに満ちていることでしょう。国勢調査のため身重のマリアを気遣っての本籍地への旅、遅く着いたためすでに宿屋はなく、宿屋の主人の好意で家畜小屋に身を横たえての出産、飼い葉桶がベッドでした。
初めに救い主の誕生を知らされたのは羊飼いたちでした。当時の羊飼いは、動物を相手にしますので律法は守れず、動物の死体に触れるため穢れた者でした。羊飼い自身、どうせ自分たちは羊飼いしかできない者と自分の生き方をさげすんでいました。その彼らに救い主の誕生が知らされました。羊飼いたちにとって、馬小屋と飼い葉桶に寝かされている乳飲み子を見つけることは朝飯前の簡単なことです。彼らは救い主に会って、喜びながら帰って行ったのでした。

聖歌第77番の詩が素朴であり、大変好きです。

1 神の御子(おこ)のイェスさまは
眠りたもうおとなしく
飼い葉桶の なかにても
打たぬ わらの上にていも

2 馬がないて 目が覚めて
笑いたもうイェスさまよ
明日の朝 起きるまで
床のそばに居(お)りたまえ

どんな人でも、どんなに貧しくみじめな思いをもっている人でも、「飼い葉桶のキリスト」には近づくことができます。イエスさまも貧しく無力な赤ちゃんですから私たちも自分の貧しさや無力さを恥じなくてもよいのです。かえってイエスさまは、『私も無力であることのつらさを知っているよ』とおっしゃってくださることでしょう。
「飼い葉桶のキリスト」の側に留まっていると、イエスさまの呼吸が聞こえることでしょう。その呼吸に自分の呼吸を合わせていると、神さまはどういう人を愛していらっしゃるのか少しずつ分かってくると思います。

『飼い葉桶のキリストから
遠ざからないように
すべてにおいて 小ささを』

「飼い葉桶のキリスト」には、だれでも会うことができます。神さまはいと小さい者の味方となってくださっています。イエス様によって神さまに出会い、自分の尊さに目が開かれる。クリスマスはそれを確認する時です。
クリスマスおめでとうございます。

2021年12月19日発行
西宮聖ペテロ教会 教報ともしび 第174号

主日の福音から

前の記事

降臨節第4主日
主日の福音から

次の記事

降誕後第1主日