「平和の君、主イエス・キリストの誕生」

皆様、クリスマスおめでとうございます。
今年の西宮聖ペテロ教会のクリスマスは、「平和の君、主イエス・キリストの誕生」というテーマで過ごします。今年2月からロシアによるウクライナ侵攻が始まり、10カ月が経ちました。クリスマスの喜びに私たちは浸っていますが、世界中には、今も多くの涙が流され続けています。クリスマスのメッセージとは何でしょうか。それはベツレヘムで羊飼いたちが羊の番をしている時に天使が現れて神を称えて歌った「天使の讃歌(グローリア)」の歌詞「天には栄光、地には平和」(ルカ2:14)に端的に表現されています。神の天上の世界は光り輝く栄光と平和に満ち溢れています。それに対して、地上では闇が支配しており、嘆きや悲しみや苦しみがあります。とりわけコロナ禍の中で明らかになってきたのは貧富の格差による分断です。暗い社会がますます暗くなっていきます。
しかし、「地には平和」と天使は歌いました。キリストの誕生によって天上の「平和」が地上にもたらされたことを告げているのです。それでは「平和」とは何でしょうか。現代の平和学の父と呼ばれるヨーハン・ガルトゥングは「平和」の反対は「戦争」ではなく「暴力」であるとしました。また、平和には「目に見える平和」と「目に見えない平和」の二つのコンセプトがあることを指摘しました。「目に見える平和」とは「目に見える暴力である、戦争がない状態」のことを言います。「目に見えない平和」とは「目に見えない構造的な暴力がない状態」すなわち「貧困・抑圧・差別から解放されて人権が保障されている状態」のことを言います。キリストは「戦争」からも「構造的な暴力」からも解放するために、この地上にやってきたのです。人と人との間を根本的に断絶するのは「コロナウイルス」ではありません。人を「人」と思わない「敵意」です。エフェソ書2章14節にはキリストの十字架の本当の意味が書いてあります。キリストは十字架の上でユダヤ人と異邦人という人種を隔てる人間の心の奥底にある「敵意」という目に見えない壁を打ち壊して平和を打ち立てたのです。「キリストは私たちの平和であります。(ユダヤ人と異邦人という)二つのものを一つにし、ご自分の肉において敵意という隔ての壁を取り壊し、……こうしてキリストは、双方をご自分において一人の新しい人に造り上げて平和を実現し、十字架によって敵意を滅ぼされました。」(エフェソ2:14)その結果、「ユダヤ人もギリシア人(に代表される異邦人)もなく、奴隷も自由人もなく、男も女もありません」(ガラテヤ3:28)という人種差別も、身分差別も、男女差別もない平和な社会が築かれていくのです。まず第一に神と人間の間にある「敵意」が取り去られ、続いて人間と人間の間にある「敵意」が取り去られるのです。
私たちもキリストの誕生を祝い、心の中に「平和の君」であるキリストを迎え入れ、人に対する「敵意」を打ち砕いて、「平和を創り出す人」(マタイ5:8)となっていきましょう。皆様のご家庭が祝され、一人ひとりが、心の中に希望の光であるキリストを迎え入れ、皆様の周りから「平和」を実現していきましょう。

2022年12月24日発行
西宮聖ペテロ教会 教報ともしび 第177号

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